不妊症について
この10年ほどの不妊治療の進歩にはめざましいものがあります。その進歩によっ て、過去には願いがかなわなかった重度の不妊症の人でも、現在では妊娠。出産に至 ることが可能となってきています。
しかし、その進歩と足並みをそろえるかのように、不妊治療を行っている医療機関 を訪れる人の数も年々ふえています。
訪れる患者さんの悩みはさまざまです。
「避妊をやめたのに、なかなか子供ができなくて」
という人、
「月経が不規則なので不妊なのではないか」
と心配して検査を希望する人、
「卵子が老化しているから子供はあきらめたほうがよい」
といわれて転院してきた人、
「卵子の提供をすすめられましたが、どうすればいいでしょう」
と質間をする人もいらっしやいます。
患者さん一人ひとりの悩みや不妊の原因はさまざまですが、その最終的な願いは、 「子供を授かりたい」という強い思いへとつながっています。
近年、自立する女性がふえ、晩婚化か進んでいます。多くの人が結婚後も仕事を続 けることを選び、「さあ、そろそろ子供を」と考えたとき、生殖年齢はギリギリとなっ ていることもあります。こうした晩婚化の影響として、「高齢出産」の枠に入る年齢 の人のなかには、「結婚してまだ2年、しかし不妊期間も二年」というような人もふ えてきています。
数字的に見ると、40歳以上の人の妊娠率は10%ほどしかありません。女性とし て、自分の子供が欲しい、好きな男性の子供を産みたいと思うのは当然のことです。 その願いをかなえるために、その10%の妊娠率を少しでも高くするために、私たち 医師は全力でサポートしていかなくてはなりません。
このサイトを上梓するにあたっては、これから不妊治療を開始しようと考える人たちから 高度不妊治療を何年も受け続けている人たちまで、幅広く焦点を当て、その悩みに少 しでも答えが見つけられるように、全体的な不妊治療の流れから診察室で患者さんか ら寄せられる疑問までを盛り込みました。自分がこれから受ける、もしくは受けてい る治療について、正しい知識を得て、不安を取り除くのは、とても大切なことだから です。
女性の体と妊娠のメカニズム
女性の体の働きとして、だいたい25~38日のサイクルで月経があり、月経と月経の間に排卵があります。
それでは、排卵とは具体的にどのように行われるのでしょうか。
生まれたての女の赤ちゃんの卵巣の中には、原子卵胞という卵胞(卵子が入った袋状のもの)の元が200万個ほどあり、成長とともにその数はしだいに減少していきます。ちなみに、思春期には20万~30万個となり、その後、一ヵ月に1000個はどが減少し、原子卵胞がなくなった時点で閉経ということになります。
さて、月経が始まると、脳の下垂体という部分から卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されて、20個はどの原子卵胞が目覚め、成長を開始します。ただし、この20個のうち、大きくなるのは主席卵胞と呼ばれる一個のみです。ほかの原子卵胞は主席
卵胞の栄養となり吸収されます。
卵胞刺激ホルモンの刺激で主席卵胞が成熟しだすと、卵胞を成長させる卵胞ホルモン=エストロゲン(E2)が穎粒膜細胞から分泌され、脳の視床下部へと屈けられます。
卵胞ホルモンがじゅうぶんに出て主席卵胞が育ったら、そこで下車体は卵胞刺激ホルモンの分泌を抑え、黄体化ホルモン(LH)を分泌します。この刺激により、成熟した主席卵胞の中の卵子が膜を破って卵巣の外に飛び出します。これが排卵です。
約三~九日間生き延びる精子に対し、排卵された卵子は約二四時間しか生命力を待ちません。そのために、妊娠を希望される人は、排卵日をきちんと特定し、性交渉を持つ必要があるのです。
排卵したあとの卵胞は黄体という器官に変化します。黄体は黄体ホルモン=プロゲステロン(P4)を分泌し、それによって基礎体温が~昇して、高温期が続きます。
排卵後に受精・着床(受精卵が子宮内膜に定着すること)が行われなかった場合、黄体は小さくなり、黄体ホルモンによって厚くなった子宮内膜がはがれ落ちて、排卵から約二週間はどで月経が始まります。